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松原葵 vs マルチ
勝手に改説氏による観戦記
<一回戦・Fブロック第8試合  △△ 松原葵 vs △△ マルチ 観戦記>

 プログラムによるランダムとは完全なランダムではない。非常に乱数に近いと言うだけ 
で、厳密には法則性がある。などと埒もない事を考えてしまう程に、このトーナメントは 
しばしば強烈な対戦を組んでくれるが、その中でもこの一戦は究極に近いだろう。 
 東鳩勢力同士の激突。 
 しかも、よりによって松原葵とHMX-12マルチ。 
 まさかこんな所で宿命の1Pvs2P対決が実現しようとは! 

 かつてエロゲ業界どころかパソゲ業界全体を震撼させる程に人気を博しまくり、エロゲ 
の概念をひっくり返した名作、ToHeart。 
 そこで攻略可能だった8人+1の中で、実に支持率40%以上を叩き出し頂点に立った 
少女こそ、純真無垢なドジっこメイドロボ、マルチであった。単なる萌えの水準を超え、 
機械に愛は宿るのかという哲学的命題まで突き付けた彼女に人生狂わされた者は超多数。 
そのアウトブレイクぶりは既に伝説である。 
 一方、確実な支持を得ながらもマルチに似てると言うだけで2P扱いされ、不遇の時を 
過ごして来たのが熱血格闘少女、松原葵。しかし葵萌えな者達は、彼女の性格に敬意を表 
するかのように地道な努力を積み重ねてきた。それは次第に実を結び、加えて彼女と関係 
が深い綾香がPS版から参戦した事も追い風となって今に至る。 
 そして今、万感の思いを抱きながら、両者がまみえる時が来た。 

 実は支持層が結構重なっているこの二人。どっちに入れればいいんだ〜、とあちこちで 
のたうち回る声を聞きつつ試合開始のゴングが鳴る。 
 名雪車ハンターに名雪車ハンターハンター(笑)が跳梁跋扈する中、次々と行われる投票。 
そして次々と投下される画像。両者とも歴史があるだけに、その品質は非常に高い。 
 しかしこうなると、生半可な支援では投票者に印象を残せない。 
 そんな中、好評を博したのはレン萌えだよもん氏がパチスロネタで放ったギャグマルチ 
SSだったり、緑のたぬきならぬ緑のマルチ画像だったり、チェき氏の描いたはわわ〜な 
AAだったりする。マルチの方が遊び甲斐があるのだろうか。 
 だが、その楽しい職人芸をエロ方面多めな画像とブルマ萌えで迎撃する葵陣営。夜中の 
攻防は全く互角、少し早めに出た4時半の中間報告は葵87票に対しマルチ88票。 

 この二人の戦い、太陽が昇っても明確な差がつかない。 
 支援も止まらない。画像はまだしもSSまでアップされる。あおいまるち氏の共演連作、 
レン萌えだよもん氏の様々な逸品などなど。というか、この二名のSS使いの活躍は強烈 
の一言で、昼間も精力的に新作を投下し続けてたりする。 
 ただ、前者が共演なのに対し後者はマルチ支援。その差が出たのか昼間は僅かにマルチ 
が抜け出す。とは言えマジで僅か。 
 加えて午後に入ると葵支援の「ファイト!〜葵伝説〜」シリーズSSが開幕し、戦場は 
ますますどっちが有利か分からない状態へ。 
 しかし、ここまで壮絶な競り合いになっているのに両陣営に殺気は全く見られない。 
 あくまでも己の萌え、己の信じる道を進む両陣営、及び投票者。 
 ああ、これぞ萌え。 

 どちらか一方に流れが偏る事なく、画像もSSも大量に投下され続ける試合会場。 
 両陣営とも投票が途切れる事はなく、支援も途切れる事はない。 
 次々貼られる画像に既出ものが極めて少ないのはさすがに歴史の蓄積を感じるし、大作 
SSシリーズの合間にしばしば小品が顔を出すあたりにも参加者の奥深さが伺える。幻の 
マルチ没シナリオたる601文書も投下され……って、上質の応援が多くて書き切れん! 
 マターリしつつも試合終了が近づくに連れて熱気が増す会場。 
 最後まで力を抜かない両陣営、次々と入る投票。例によって駆け込みを狙う者、<< >> 
囲いを忘れる者と突っ込む者、そしてラストはなにがしだよもん氏の登場をピ♪ろ式氏が 
ピンポイントで的中させるという奇跡と共にゲームセット。 

 ……と思ったら、この試合最大の奇跡は終了後に待っていた。 

 総得票数、なんと270vs270! 
 最萌トーナメント史上初、両者全くの同数である。 
 いくら何でもこの二人でこうなるなんて、偶然の一言で片づくのか! 
 暫定結果発表後は正にお祭り騒ぎ。2Pマルチを葵扱いすべきなのか、アクアシャワー 
はマルチに入れてホントにいいのか、等と普段なら笑って流される受け狙い投票の扱いが 
かなりマジで議論され、結果……今まで通り、どっち向きの投票かが辛うじて分かる水準 
なら可能な限り採用する事と決定。両者同点でファイナルアンサー承認! 

 この日、私は確かに、伝説が生まれる瞬間を見た。 


<一回戦・Fブロック第8試合  △△ 松原葵 vs △△ マルチ 分析>

 偶然が〜い〜くつも〜重なりあ〜って〜♪ 

 としか言いようがない試合だった。組み合わせもそうなら結果もそうだ。 
 かつてギャルゲ界の頂点に君臨したマルチは、未だその功績を胸の内に宿らせる者たち 
から大いなる支援を得て。 
 そのマルチの陰に隠れてきた葵は、長い時を共に歩んだ支援者達の強力な後ろ盾を糧に。 
 最後まで戦い抜いた、その結果は両者同点であった。 
 今までも感動的な試合を見てきたが、これは凄すぎである。ルール上、確かに両者同点 
なら両方とも勝ち抜けという一文はあるのだが、3桁の投票を得る戦いでその項目が本当 
に効果を発揮するなんて誰が考えただろうか。 
 しかも、あらゆる意味で似通ったこの二人の一戦で。 
 少なくとも私は考えなかった。 
 事実は小説より奇なり。いや冗談抜きで、漫画でこれやったらベタベタの一言で終わり 
である。世の中はこれだから面白い。 

 両者の応援の質を見ると、葵はゲーム自体での魅力をそのまま増幅した直球系の支援が 
多く、かつエロ系も強め。一方のマルチは、変化球的に笑いを取る二次創作方面で強さを 
発揮した一方、ロボットという存在故のドシリアスなネタもぶつけてきた。 
 かぶる面も多いとは言え、両者の支持層の傾向が伺えて興味深い。そしてそれらは確実 
に、それぞれのキャラの魅力を伝える事に成功していた。 

 同時に、この試合で思い知らされた事がある。 
 以前に私は違う試合の解説で、メジャーキャラ同士の戦いでは職人芸の効果が薄れると 
書いた。画像の量や投票が多い状況ではインパクトを確保できない、と。 
 謹んで撤回させて頂く。 
 あおいまるち氏、レン萌えだよもん氏、ファイト!〜葵伝説〜氏などの活躍は、見事と 
しか言えない。大規模戦闘のさなかであっても、彼らの職人芸は確かに人々の印象に残る 
だけの何かがあった。 
 職人の情熱は物量を超える事が出来る。その実例を見せてくれた彼らに乾杯。 

 かくして2回戦は史上初の三つ巴戦となる。 
 二人が新たに迎える相手は神尾晴子。知名度、応援の物量や手際という点では詰めの甘 
さが伺えるものの、こと泣き系の感動に関しては葉鍵史上最強とも言える相手である。 
 属性がまるで異なる相手故に、葵やマルチにイマイチ萌えない系統の投票者から支持を 
受ける可能性もある。葵及びマルチの陣営には、大量投票の中でも支援効果を発揮しうる 
職人の存在が確認された点が心強いが、両者で票が割れる可能性は否定できず、見通しは 
実の所あまり明るいわけでもない。 
 はっきり言えば、どちらか一方だけが勝ち上がったなら、2回戦はかなり楽になった事 
だろう。試合中にも散々悩む声が出たように、葵とマルチはファンの属性が近い。両者の 
支持層をひとまとめにすれば相当強力な勢力になっていたはずだからだ。 
 ……しかし、こんなにも素晴らしかった試合の後で有利不利の話など、するだけ野暮と 
いうもの。 
 二人の祭りはまだ終わらない。それだけで十分ではないか。 
 あとは次の試合もまた、己の萌えを精一杯にぶつけるのみである。 

 激戦区と呼ばれたFブロック。 
 その最終戦は、精一杯に萌えを語り合った両陣営が共に勝ち上がるという、これまでに 
出会った事のない感動と共に幕を閉じた。 
 葉鍵板最萌トーナメントに出会えて本当に良かった、と思える一戦であった。 

gnuplot氏作成グラフ


葵270−マルチ270で引き分け!!