この二人、どこか似ている。長く艶やかな黒髪だけではない、雰囲気が似ている。 
　その少女はあまりに重い身体的ハンデを負いながら、それを全く感じさせない強さと明るさを 
持っていた。底抜けの胃袋で周囲を驚愕させ、何気ないボケで人々を和ませ……しかし、 
その奥にあるのは、自分の知らない世界に踏み出す事を恐れる、ガラスのように繊細な心。 
　少女は強がっているのかも知れない。己の弱さが、大切な人を遠ざけないように。 
　その少女は嫉妬すら起きない程に何もかも手に入れながら、何事も無いかのように平然と 
振る舞っていた。どこにでもいる普通の子のように笑い、ふざけ、隙も見せ……だけど、 
ふと脳裏によぎるのは、無邪気に、全力で目標を追いかけた末に訪れた、幼い頃の小さな悲劇。 
　少女は手加減しているのかも知れない。己の才能が、大切な人を遠ざけないように。 

　そう。 
　ベクトルこそ正反対と言える程に違うけれど、二人は似ている。 
　自分の全てを気兼ね無くさらけ出しても、なお平然と受け入れてくれる人を求めている点で。 
　川名みさきと、来栖川綾香。 
　ど真ん中直球の魅力も十分に持つ二人。だけど屈託のない笑顔の奥に、複雑な螺旋を描く何かが 
確かに存在する二人。 
　果たして、萌え人は彼女たちに何を見出すのか。 
　そんな事に思いを馳せつつ、決勝トーナメント準々決勝第二試合が幕を開ける。 

　あらゆる意味で戦いだった前日の試合は何とも言えない複雑な余韻を本スレに残し、試合開始の 
直前になっても容易に振り払えなかった。 
　しかしそこは流石に職人達、その空気をも活用して入場シーンのSSを作り上げる。最近は 
入場シーンが複数出るのがもはや常識だが、今回は他の人の作品に続編を付けるのが流行。そして 
かなりの数が両者共演＆前の試合の参加者だったあかり・佐祐理共演になった点に、職人達の 
矜持が伺える。最後はどうか幸せな記憶を。 
　しかし、どこか重苦しいムードもここまで。 
　試合開始はR152-885。例によって大挙して走り去るカーレース集団が、雰囲気を綺麗さっぱり 
断ち切って一気に会場を盛り上げた。その軍団の一員、早苗重戦車氏がR152-910でいきなり 
みさき支援の重量級FLASHを投下。きっちりナローバンド向け版も揃えているのが芸コマ。 
　次いで開幕１分、912で玉砕小ネタ人氏がちょいシリアスなみさき支援SSを発動。すぐにスレが 
移動すると分かっていながら投下するのは、やはり相手が葉陣営最強と名高い綾香故か。 

　そしてスレ移動しR153、画像が次々と落とされる中で、45のみさき入場SSは多くの参加者の 
感動を呼んだ。狙い過ぎと言えば狙い過ぎだが、確かにこれがみさき先輩だし。 
　59ではまたも玉砕小ネタ人氏が出現、朝まで連続支援を宣言。91では詩子さん氏が坂下vs詩子の 
続編めいた１レスSSでみさき側参入表明、130では吉野家コピペ……みさきがやると意味深……と 
言うわけで、開始直後はみさき支援者が飛ばす。 
　綾香側はR153-95で明治☆波田志代氏により綾香入場FLASHが投下され、98でそんな☆ばながー♪氏 
の自作絵が出て、151でフォン・名無し氏からまたもFLASHが出るも、文章支援が無いせいかどうも 
スレ上での勢いはみさき側に傾いている模様。 
　はぇ〜、ななしさんですかー氏による160のオチ付きみさき支援、電球氏の手で163に落とされた 
みさきが寺女へ侵入する物語SSなど、ネタ系でもみさきが一歩先んじた感あり。 
　とは言えまだ開始１時間未満、先は長い。 

　綾香支援のFLASHをみさき派のチェき氏がミラーした事からも分かる通り、和やかな雰囲気で 
試合は進む。 
　宣言通り深夜のスレに頻繁に現れ、ONEキャラ総出演のTV番組風支援を繰り広げる玉砕小ネタ人氏。 
千鶴料理AAを繰り出して不埒な発言者を滅殺したのを初め、ネタ的活動を繰り広げるばながー氏。 
　R153-218で奈々氏氏(誤植にあらず)が綾香画像の一斉投下を行使し、他力本願寺氏は221でみさき 
FLASHの原曲(だけ)を投下し、231では怪しげなみさきSSと、何気にネタと支援がごちゃまぜに 
展開されつつ夜が更ける。 
　両者とも支援は画像主体、文章系は玉砕小ネタ人氏の他はあまり目立たない……と思いきや、 
みさき支援の163に対して即興SSの名手、名も無き闘票者氏が276で綾香支援と称し続編を投入。 
両者支援風味な作品となっていたが、なかなかやってくれる。と思ったのも束の間、そのSSに 
電球氏が300で続編発表。総合車両所氏が350で更に続きを投下。お見事。 
　339でえるくる氏がAnother-To-Heart綾香仕様を投下し、370からは綾香エロシチュSS。372では 
最近支援者としても活躍してるリング穴Joe氏がバキネタ両者支援SSを投下し、399では詩子さん氏が 
みさきと雪見のエロシチュ、413では名無したちの挽歌氏が七瀬共演ものと、午前３時あたりから 
文章系支援が目立ち始める。 
　代わりに画像支援は影を潜めたが、392では他力本願寺氏がみさきムービーを投下、458では手持ち 
綾香画像を全放出する猛者が現れたりとなかなか飽きさせない。 
　469では未完成とは言えみさき支援のためにムービー制作に手を出した者も現れる。やはりここまで 
来ると、支援者の気合いも尋常ではないようだ。 

　夜明け近くになって477で玉砕小ネタ人氏が一時撤退。だが483で詩子さん氏が、もはやお家芸とも 
言えるSSとMIDIの複合攻撃みさき支援を投下。486&491でみさき独白SS、512では電球氏が350のSSに 
更なる続編を作成(続いてたのか！)。とこの時間もみさき支援がやや優勢か。 
　そんな中、神奈さま氏はみさきに投票しつつ両者を支援し、石氏は516からハガレイ共演の綾香＆ 
坂下コスプレSSを投下して踏ん張る。しかし綾香支援のSSって、坂下が犠牲者になるケースが多い 
のは気のせいだろうか。 
　なお、535で出た「の＜R＞」氏の綾香画像はかなりの破壊力を示した。 

　そして日が昇り健全な方々は会場に来れなくなる(笑)時間帯、試合会場はマターリ風味。 
　R153-413の続編、様々な葉鍵キャラが共演する食い物SSが568から投下され始め、SSへのリンクも 
貼られる中……一日遅れの誤爆となった594のさゆりん票に595-598でツッコミコンボが炸裂。 
試合とは全然関係ないけど、とりあえず爆笑だから一度見てみるよろし。 
　ともあれ、しのさいか氏の綾香支援SS、とっとこ名無し氏のみさき支援SSがこの時間帯に 
立て続けに投下。投票主体のスレ上で一際目立つSSワールドを形成した。 
　超先生シナリオでいいからPC版綾香シナリオをくれと爆弾発言かます者、670で様々なリンクを 
貼る通りすがりのみさき支援者氏、そしてR153-680、きっちり12時に現れる詠美車氏。 
　昼休みの時間帯に入ると、ちょっとしたお祭り発生。 
　684から来栖川姉妹の母乳SSを投下する名も無き闘票者氏、綾香の名をかたるどこぞの女を 
晒し上げる(笑)R153-691氏、昼休みに即興でSSを書き上げる714氏、そして717では大空寺さま氏 
登場。727の名無しさんだったりするだよもん氏の１レスSSを経由して、733ではあまとう氏が 
みさき自作絵、734ではシュバルツ・ブルーだー氏がみさき絵と、立て続けに熱い支援が出た。 
萌え人たちの年齢層が伺える(苦笑)。 

　午後。745から猫好き氏がみさきSS三部作を投下し、752、765、757、778、783、791と既出または 
自作の画像が出る。781では超古館氏の綾香膝枕シーン改変ものMP3を放ち、799でチェき氏がみさき 
支援AA。その後も画像投下が続きつつ時が流れていたが、とっとこ名無し氏がR153-824に現れて 
複数のみさき支援SSを一気に投下、スレの雰囲気を文章主体にひっくり返した(笑)。 
　すると感化されるが如く848で詩が出たり、850で綾香支援SSへのリンクが出たり、しのさいか氏が 
872で綾香SSを投下したり。不思議な物で、こうなると画像投下が目立たなくなる……その代わり、 
出てくる画像はかなりの確率で自作物だが。 
　巨大支援のミラーが積極的に行われたのもこの試合の特徴で、両者の支援物、及び最萌決勝 
トーナメントFLASHのミラーが913でも実施された。 
　支援も投票も熱く、しかしマターリといい雰囲気のまま、午後７時に再びスレ移動しR154へ。 

　綾香は画像、みさきは文章系の支援が多めなR154序盤。みさき側が46の短編SSや50のAAで笑いを 
取れば、64では綾香SSが最後の気合いを振り絞る。 
　終盤になると、数枚単位で次々出てくる綾香画像がスレを支配気味に。しかしそこへR154-96で 
電球氏が「目の治ったみさき先輩」画像を投下。163でも同ネタの絵が出て、確実な反響を呼ぶ。 
　神奈さま氏、とっとこ名無し氏、名無したちの挽歌氏がSSを投下し、玉砕小ネタ人氏も復活し、 
更に名無し子氏も現れ、やはりこの時間になると会場に来れる支援者が増える。 
　R154-225でラピード＆コモードのネタ写真が現れたりしつつ、気が付けばラストスパートの 
時間帯。投票者の熱いコメントをよく見ると、みさき支持者は彼女自身への萌えを熱く語るケースが 
多く、綾香は更なる高みを目指そうとする明日への希望が伺える。 
　257でみさき支援、263で綾香支援のギャグSSが貼られ、自作画像も252と266で双方が激突、と 
熱気を増す会場。流れが加速するせいで全ての作品をじっくり見る余裕がないのが困った物だが、 
ここではあえてR154-313の綾香支援SSを個人的イチオシとしておく。 
　なお、「思わず作ってしまったぞ」とばかりに１レス単位の小品SSが多数投下されている点も 
注目しておきたい。熱い支援は参加者をも引きずり込む物のようだ。 
　最終盤は玉砕小ネタ人、名無し子氏、電球氏といったこの試合の主力支援者達が追い込みに 
入る中、あまとう氏、総合車両所氏、七瀬車氏、午後の紅茶氏、名無しで…いいと思うよ氏も活動。 
熱いコメントと共に次々と票が投じられていく。 

　そのままマターリと投票が続き、駆け込みも混乱無く決着してR154-566で試合終了。 
　４６１vs３９４でみさきが綾香を下し、準決勝進出者がみんなエチシーン無しの可能性を 
回避してのけた(苦笑)。 

　結果発表後の試合会場を満たしたのは、一瞬の沈黙。 
　そして、敗者側ばかりか勝者側からも次々に上がった、とまどいの声。 
　来栖川綾香、準々決勝敗退。 
　それが東鳩最強、ひいては葉陣営最強と目されていた存在に突き付けられた現実だった。 
　恐らく呆然とした方も多いだろう。 

　しかし、改めて川名みさきというキャラを考えてみると……。 
　設定がやり過ぎだという声こそあるが、彼女を嫌いだという意見はほとんど聞かない。 
　霧島聖、宮内レミィ、沢渡真琴、里村茜といった名の通ったキャラと戦い、その全てにおいて 
危なげなく勝利している。 
　ONE決戦となったブロック決勝では、次の試合では勝者に投票すると宣言した者が続出していたし、 
どっちも好きだから棄権するという声も結構出ていた。その発言者達は、この試合ではみさきへ 
投票する事をためらいはしなかっただろう。 
　そして何よりも、自分に潜む身障者差別の心を恥じ入らせ、駅前の放置自転車を思わず片付ける 
萌え人まで生んでのけた、その影響力の強さも忘れてはなるまい。 
　……気付いてみれば、別にどうという事はない。 
　みさきは元々、非常に高いポテンシャルを秘めていた。 
　票割れを起こす対戦カードだったり、直前の試合や直後の試合に話題が集まった影響であまり 
注目されなかったりしたせいで、それが表面化しなかっただけの話だ。 
　これにONE最後の一人という肩書きが加わり、更に支援者・投票者が気合いをぶつけたのだから、 
この程度の爆発力を見せても別段驚くには値しない。 
　逆に、支援者ですら今の今までその潜在能力に気付かなかった事の方に驚くべきなのだろう。 
これもまたトーナメントの組み合わせの妙と言うべきか？ 

　恐らく綾香スキーの多くは、次の準決勝こそ正念場だと考えていたように思う。 
　みさき支持者ですら「綾香が負けるのは信じられない」と言っていたのだから、その判断を責める 
気にはなれない。だが、結果的に油断とも言うべき状況に陥ったのは否定できないだろう。 
　また、綾香は人気こそ非常に高いが「濃さ」はあまり無い爽やか系キャラなので、ここぞという 
時の熱狂度と言うか気合いでちょっと詰めの甘さが出たのかも知れない。 
　みさき側は、上記の通りの認識だから「これが最後」とばかりに全力をぶつけてきた。その勢いを 
押し返しきれない、と一部の支援者が気付き始めた頃には試合は既に終盤だった、という感じか。 
皮肉にも、綾香自身のポテンシャルの高さが事態の認識を遅らせたっぽい。もう少し弱いキャラ 
だったら、もっと早くにみさき優勢を悟ってそれなりに動けたのだろうが……。 
　綾香への萌えが不完全燃焼に終わってしまった者が、結構多そうなのは不憫だ。 
　だが幸いと言うべきか、迷える綾香萌えにはまだ道が残されている。 
　綾香とは切っても切れない関係にあるセリオ。綾香と決勝戦という夢は破れたが、その分支援者が 
全員まとめてセリオに回る事になろう。支援能力に定評のあるセリオに、綾香陣営の物量と熱意が 
追加されるとなると……いい意味で、めっちゃ嵐の予感。 

　さて一方、みさきは準決勝で倉田佐祐理と激突する事になった。 
　この試合が行われる前なら、両者の力関係はさゆりん有利の一言だっただろう。しかし、今や 
みさきの潜在能力の高さは証明された。むしろONEキャラ支援者の能力の高さ、FLASHなどの爆弾が 
ある分、浮動票獲得能力ではみさき有利とすら考えられる。 
　佐祐理もメインキャラを食いまくってきた強者だけに、どういう展開になるか読めないが。 
　まぁ、食うか食われるか……と言うより(お弁当を)食うか食わせるか、というマターリ対決になる 
可能性は高いし、それを希望したい所ではある。 
　最後に彼女へのエールとして、試合開始直後のR182-890で白雪車α氏が語った言葉を掲載しよう。 

　　　最近、英語では障害者のことを｢challenged｣と呼ぶそうです。 
　　　神様から試練をいただき、それを克服する力の持ち主…… 

　チャレンジャーに幸あれ。