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最萌トーナメント 幕間SS集(1回戦)

(Round21)
73 :レポーターだよもん : 01/11/02 23:47 ID:xdL294Yn
倉田佐祐理陣営レポート

レポーター「見事な勝利でしたね。」
佐祐理「はぇ〜すごかったですね〜みなさんありがとうございます〜」
レポーター「どうですか、今のお気持ちは?」
佐祐理「勝てると思ってなかったんで、すごくうれしいですよ〜」
レポーター「親友の舞さんが一回戦で負けて、気持ちの入った1戦だったと思いますが。」
佐祐理「そうですねー、やっぱり舞の応援があったからだと思います〜 ねっ、舞。」
舞「......そんな事ない。佐祐理がかわいかったから勝った。」
佐祐理「あははーっ、ありがとーっ、舞。」
舞「......(テレテレ)」
レポーター「・・・お二人の友情に割りこんで悪いですが、2回戦の七瀬留美戦に向けて一言お願いします。」
佐祐理「そうですねー、七瀬さんのほうがかわいいから、佐祐理が負けるんじゃないですか?」
レポーター「そ、そんな消極的な・・・」
佐祐理「あははーっ、それでも応援してくれる人がいるならがんばりまーすっ!」


76 :レポーターだよもん : 01/11/02 23:47 ID:xdL294Yn
来栖川芹香陣営レポート

レポーター「残念ながら負けてしまいましたね。」
芹香「・・・・・・。」
レポーター「そうですねって、えぇと、やっぱり相手が悪かったんでしょうか?」
芹香「・・・・・・・・・。」
レポーター「佐祐理さんは強かったけど、応援してくれる人がいっぱいいて嬉しかった、と?」
芹香「・・・(こくこく)」
レポーター「そうですねぇ、松山氏や綾香さんの応援は心惹かれるものがありました。あっ、ここでその綾香さんが来てくださいました。」
綾香「姉さん、残念だったわね。」
芹香「・・・・・・。」
綾香「応援ありがとうって?妹として当然の事をしたまでよ。」
芹香「・・・(なでなで)」
綾香「ちょっ、姉さん・・・こんなところでっ、恥ずかしいってば!」
芹香「・・・(なでなで)」
綾香「やっ、やめてってば・・・」
レポーター「盛りあがりのところ申しわけありませんが・・・」
綾香「・・・変な勘繰りしたら許さないわよ。」
レポーター「いっ、いえ、そんな事はまったくもって・・・!っていうか目がマジー!」
綾香「エクストリームの面白さをわからせてあげましょうか・・・?」
レポーター「い、以上、来栖川芹香レポートでしたー!!ひぃ〜!!(逃亡)」
綾香「逃げたか・・・ま、いいわ。みんな、私の試合をよろしくね。11/12だから。」
芹香「・・・(がんばれ)」


85 :なにがしだよもん ◆ie2wgyeo : 01/11/02 23:53 ID:TT+tJmCu
 倉田佐祐理の控室には、先ほどから、祝福を贈ろうと、彼女の知人たちが集まっていた。
「佐祐理さん、おめでとう」
「倉田先輩、おめでとうございます」
 祝辞のたびに、はぇ〜と恐縮の声を上げ、ありがとうございますと答える佐祐理。
 と、そのとき、控えめなノックの音が響いた。
 ドアを開ける祐一。
 そこに立っていたのは誰あろう、対戦相手である来栖川芹香とその執事だった。魔女のいでたちをした芹香は、
一同の視線を浴びると、そのぼんやりとした表情を変えることなく、小さくお辞儀した。
「倉田佐祐理様にお祝いを述べに参りました」
 執事が口を開いた。
「一回戦突破、まずはおめでとうございます」
 と、そこで芹香はぽそぽそと老人に耳打ちする。頷く執事。
「それと、実は、お客様をお連れいたしました。差し出がましいようですが、ご本人の強い希望と言うこともありまして…」

 その言葉も終わらぬうち、小さな人影が、部屋に入ってきた。
 その人物を何気なく見つめた佐祐理だったが、突然後ずさりした。
 少年だった。あどけないその面立ちは、何処か佐祐理に似ていた。正装し、花束を持った少年は、ほほえみを浮かべたまま、
佐祐理に近づこうとした。
「キャアアアア!」
 金切り声を上げたのは佐祐理だった。部屋の隅にうずくまると、背を向け、頭を抱えて、イヤイヤを繰り返す。
「許して! 許して、一弥ぁぁ!」
 一弥と呼ばれた少年は立ち止まり、とまどった表情をした。どうして、と問いたげに芹香の方を振り返る。
「許さない! 佐祐理を傷つける人は許さないからっ!」
 突然、舞が芹香につかみかかる。間一髪、立ちふさがる長瀬。
「乱暴はやめていただきたい」
「佐祐理は苦しんでいた! あの子のことを気にして、ずっと! それが、忘れかけた頃になんで、こんな残酷なことをするんだ!」
「言ったはずですぞ。"ご本人の強い希望により"と」

「でもっ!」

「おねぇ…ちゃん?」

 少年の細い呼びかけが、二人のやりとりに割り込む。
 一弥は、自分に背を向けたままの姉に、そっと呼びかける。
「僕だよ。一弥だよ。ねぇ、お願いだから、こっちを向いて。おねえちゃん」
 佐祐理の背のふるえが止まった。ゆっくり、ゆっくりと振り向く。
「…かず…や?」
「おねえちゃん…ずっと会いたかったよ」
 涙でぐちゃぐちゃになった顔。おねえちゃん、の声のたび、口を覆う佐祐理。
 でも目はまばたき一つしない。逝ってしまった弟の姿を余さず写し取ろうとするかのように、まっすぐ見つめ続ける。こぼれる、真珠の涙。
 二人の間を隔てていた堰が破れた。
「一弥…一弥、一弥ぁぁ!」
「おねえちゃああん!」
 二人は駆け寄り、抱きしめ合う。
「一弥、ごめんね、ごめんね、おねえちゃん、何も出来なかった、あなたを死なせてしまって、本当にごめんなさい」
「おねえちゃん、ぼく恨んでないよ。おねえちゃんが苦しんでるの、見ててつらかった。そんなに苦しまなくていいよ、楽にしていいよって言いたかった。だから、今日は、どうしても、来たかった。だって、このトーナメント世界でしか、お姉ちゃんに会えないと思ったから」
 佐祐理の声も、一也の声も乱れていた。
「一弥…!」
「おねえちゃん!」


「さ、二人きりにさせてやろう」
「うん…わかった」
 祐一に背を押され、頷く舞。
 名残惜しげに部屋の方を見つめていたが、ふぅとため息をつき、首を振った。
「佐祐理、これで良かったのかな」
「わからない…。でも、ありがとうは言いたい気分だな」

 深々と礼をする祐一に、微笑みを返す芹香。
 芹香は目の端で角の暗がりに立つ人物を認め、小さく会釈した。


「意外にいいやつだね、あんた」
「天使は誰だって善良なの」
 暗がりに立っていたのは、ルミラとユンナだった。
 照れ隠しなのか、顔を背けるユンナに、にやつくルミラ。
「でもさ、驚いたよ。あのお嬢ちゃんにいきなり召喚されて、一弥くんのこと尋ねられたときはさ。
地獄の知り合いに探してもらったら、一弥君、そっちにはいないらしくてね」
「あなたに頼まれたときは驚いたわ。でもね、断れないじゃない。一弥君のことで苦しんでる、助けてあげたいって言われたら、さ」
「はは、やっぱりあんた、いいやつだ」
「だから、天使は全員いいひとなの!」
 二人は見つめ合った。それぞれの瞳には、譲れない意志の炎が燃えている。
「負けるなよ」
「わかってる。あなたもね」
 吸血鬼と天使は、空中で手のひらを叩き合わせると、別の方向へと歩き出した。

 ああ、月は、今夜も輝く。
 勝者にも、敗者にも
 生者にも、死者にも
 これからの未来にも
 そして
 これまでの思い出にも
 月は等しく、穏やかで優しい光を贈り続けるのだ。


 このトーナメントに、幸いあれ。


(Round27)
158 :詩子さん ◆idAGiMOo : 01/11/06 23:15 ID:6USg7zDO
「茜、おつかれさまっ!」
あたしは茜に抱きついた。
折原君、何であきれた顔してるんだろう?
「詩子もおつかれさまです」
「うん、折原君もついでにおつかれさま」
「茜、おつかれさん、柚木もついでにおつかれさん」
「ボク、ハイジャンプ頑張ったよ」
「ハイテンションだろ、おまえの場合」
「うわっ、ひどいこといわれてるよ、茜」
「おまえだ、おまえ、柚木だ、柚木」
「茜、はい、ワッフルだよ、疲れたときは甘いものがいいんだよ」
「ありがとうございます、詩子」
「あたしのは普通でいいからね」
「わかりました、浩平は私と同じでいいですね?」
「…」
「折原君はいらないって、茜、全部食べちゃいなよ」
「……はい。浩平、食べちゃいますね」

今日一日おつかれさまでした♪


182 :名無しさんだよもん : 01/11/11 23:58 ID:SFtHI1Xa
 11月11日。
 もう随分と夜も遅いけれど、その日のエコーズには人が残っていた。
 冬弥君に彰君。そして先にこの戦いを潜り抜けたはるかちゃんと、仕事が終わっ
て掛けつけてきた由綺ちゃんが、マネージャーさんのノートPCを囲むような形で、
ある掲示板の書き込みを追っていると、突然にわたしと対戦相手それぞれの応援を
してくれる人の書き込みから、話題が入れ替わった。
「美咲さん、最萌戦の投票が終わったよ」
 そう言う由綺ちゃんの言葉にも、いまいち実感がわかない。
「マナちゃんもはるかも勝ったからなぁ、美咲さんも勝ってほしいよ」
 次の日には自分もあの場所で対決となる…… 由綺ちゃんにとっては、人事では
いられなかったのだと思う。
「ん…… 美咲さん人気だね。由綺もこれなら安心だね?」
「はるかにそう言われても、わたし心配だよ……」
 はるかちゃんの場合は会社も違う戦いだったけれど、由綺ちゃんの場合は、東鳩
の姫川琴音さんが相手だ。おまけに同じ絵師さんと言う、めずらしい同一対決。
 先輩格の姫川さんの方が分が強いとの、もっぱらのうわさだった。
「でも、今回の対戦は同じLeafのメイフィアさんとでしょ? あたしたちの先
輩に当たるような人と戦うことになるなんて……」
 本当の事を言うと、あんまり他の人との人気争いと言うのは好きじゃない。まし
てや同じところの所属で、わたしの先輩に当たる人だから、それは余計にある。
「なに言ってるんだよ美咲さん。ここに書いてくれているファンの人だって、美咲
さんを好きだから応援しているんじゃない」
 彰君がそう言って励ますけれど……

「はるかにそう言われても、わたし心配だよ……」
 はるかちゃんの場合は会社も違う戦いだったけれど、由綺ちゃんの場合は、東鳩
の姫川琴音さんが相手だ。おまけに同じ絵師さんと言う、めずらしい同一対決。
 先輩格の姫川さんの方が分が強いとの、もっぱらのうわさだった。
「でも、今回の対戦は同じLeafのメイフィアさんとでしょ? あたしたちの先
輩に当たるような人と戦うことになるなんて……」
 本当の事を言うと、あんまり他の人との人気争いと言うのは好きじゃない。まし
てや同じところの所属で、わたしの先輩に当たる人だから、それは余計にある。
「なに言ってるんだよ美咲さん。ここに書いてくれているファンの人だって、美咲
さんを好きだから応援しているんじゃない」
 彰君がそう言って励ますけれど……
 「偽善者」とか「痛い」とか「トラウマ」って一体……
 わたし、他の人からはそう言う風に見られてるのかな? なぜなんだろう。
「お、おい彰、お前! 見せる所違うじゃないか!」
「ひどいよ彰君、いくら幾らか本当のことかもしれないけれど、美咲さんをこんな
風に言うなんて……」
「由綺、お前もそれひどすぎ」
 ……由綺ちゃん、実は影でそんな風に思っていたんだ。やっぱりわたしが冬弥君
を奪ったのがいけないんだ……
「ごめん、ごめんね由綺ちゃん。わたしなんかが冬弥君を奪ってしまったから……」
 わたしがそっと呟いたのに気がついて、由綺ちゃんが表情を強張らせた後、慌て
てわたしに謝って来た。
「ご、ごめんなさい美咲さん! わたし、そう言うつもりで言ったんじゃな……」
 由綺ちゃんが慌ててフォローするけれど、それをやんわりと止めてから。
「ううん。冬弥君を奪ったのは事実だもの。由綺ちゃん」
 もう一度、自分にも諭すように言った。
「……そろそろ結果が出る頃ですわ。最新の書き込みを見ることにしましょう」
 このままだとお互い謝りつづけるのを察してか、由綺ちゃんのマネージャーさん
が、自分のPCを操作しながら、掲示板の内容を最新のものに変える。
「………ん?」
 はるかが書きこみを追っていく。
「そろそろ結果が出ますね?」
 由綺ちゃんのマネージャーさんも、画面のスクロールをゆっくりにしながら、書
きこみを追っていく。

「……そろそろ結果が出る頃ですわ。最新の書き込みを見ることにしましょう」
 このままだとお互い謝りつづけるのを察してか、由綺ちゃんのマネージャーさんが、
自分のPCを操作しながら、掲示板の内容を最新のものに変える。
「………ん?」
 はるかが書きこみを追っていく。
「そろそろ結果が出ますね?」
 由綺ちゃんのマネージャーさんも、画面のスクロールをゆっくりにしながら、書きこみを追っていく。
「どうなのかな? ねぇ、どうなったのかなぁ? 美咲さん、冬弥君、彰君」
 由綺ちゃんが心配で心配でたまらないらしい。けれど、勝負は既に審査員の手に渡ってしまっている。後は、待つだけ。
「どうなるのかしら……」
 まるで他人事の様に言う自分が、そこにいた。
「途中の集計だと、美咲さんがダントツで人気だったから、多分そのまんまだよ」
「じゃ、じゃぁ美咲さんが勝ったの冬弥?」
 PCを覗き見ていた冬弥君と彰君が、そんな風に言うのも、どことなく他人事に見えてしまう。
「え? え? えぇ!? うそっ!?」
 勝ったのかな? なんだか実感がわかない。本当に他人事のようで、実感がない。
 けれど、冬弥君達の興奮振りで、わたしが優勢のままに終わったと言うのだけは理解できた。
理解できたけれど…… 喜んで良いかは判らなかった。
「大丈夫だよ! 美咲さんが絶対勝つよ、だって美咲さんだもの。このまま二回戦だって勝てるよ」
 由綺ちゃんが興奮あいまって私の手を取って祝福してくれるけれど、もしこのまま二人が
二回戦を潜り抜けてしまえば…… 由綺ちゃんと私の一気打ちになる。
 そればっかりは、本当にいやだな。
「ですが、二回戦はおそらく、あの東鳩の来栖川綾香。華々しく散るのが目に見え
てますね……」
 唐突に由綺ちゃんのマネージャーさんが、私の心を見透かしたように言った。
 マネージャーさんの目は、まるで「貴方には場違い」だと言っている様だった。
 でも…… わたしにはわたしが出来る事を精一杯やるしかない。
 あとは、わたしの事を応援してくれる人の力が、物を言うから……

だから…… わたしの事を応援してくれた人、二回戦も応援して…… くれるかな?


(Round37)
814 :こどもたちの祈り : 01/11/16 23:20 ID:y7F/MAUu
「あ〜あ、負けちゃったか」

戦い終わって、私は清々しい気持ちでトーナメントの舞台を後にした。
敗者らしくない、自分でも不思議なくらい晴れやかな気分で。

葉鍵板最萌トーナメント1回戦Dブロック第4試合。
私、川口茂美と「うたわれるもの」のヒロイン、エルルゥとの戦いは、128対125。
エルルゥが土壇場で大逆転、しかも過去最少の得票差記録というおまけつきで
劇的な幕切れを迎えた。
私は残念ながら負けてしまったわけだけれど、サブキャラ中のサブキャラという
立場でこれだけの熱戦を繰り広げることになるとは思ってなかったこともあって、
自分の予想以上にこの試合を楽しむことができた。 まあできることなら、
神尾さんと対戦とまではいかなくても、少しでも長く彼女と同じ場所にいたかったけど。
神尾さんは既にCブロックで2回戦進出を決めている。 私はもうこの舞台から
降りてしまうけれど、彼女にはこのままどんどん上まで行ってもらいたい。
神尾さんはほんとにいい娘だから。 もっと愛されていい娘だと思うから。
私、神尾さんのこと、応援する。
応援しても、いいよね……?


――――?

ふと、後ろに誰かの気配を感じて、思わず振り返った。
目に入ったのは、私よりも少しだけ年下に見えるかわいらしい女の子の姿。
民族衣装っぽい服装も素敵だけど、何よりも彼女を特徴づけているのが、
頭についている、動物のそれとしか思えないような耳、そしてふさふさの尻尾。

そう、ついさっきまで私の対戦相手だった女の子。
エルルゥの姿だった。

「あ、どうも。 2回戦進出おめでとう。 いい試合ができてうれしかった。
ありがとうね」
私は今の正直な気持ちをエルルゥに伝えた。

「――――」
彼女の口からは、言葉は返ってこない。
ただ彼女は、顔をほんのり赤らめた後、私に静かな微笑みを投げかけてくれた。

実は驚くことに――私も試合開始直前まで知らなかったのだけれど――、
彼女は『言葉を持っていない』。 いや、これは間違った表現だ。エルルゥはまだ
『自我を持っていない』。 これが今の彼女を言い表す一番適切な言葉だろう。
彼女が活躍するゲーム、リーフの最新作「うたわれるもの」は、ついこの間
その制作が発表されたばかりで、主なキャラクターのイラストと大まかな設定
以外は、発売予定日はおろか彼女たちの性格や口調、生い立ちなども、全く
公にされていないのだ。 だから彼女は未だ『自分の言葉』を持っていないし、
感情を表すときも、可もなく不可もないような表情や仕草しか見せることがない。
言い方を換えるなら『美しい身体だけを与えられた胎児』――、彼女はまだ
その程度のキャラクターでしかなかった。

だからといって私は自惚れていたわけではない。 私だって、ちゃんとした人格が
与えられている代わりに『姿が与えられていない』という大きなハンデを抱えてる。
このトーナメントで楽をして勝てる試合など1つもないということは十分すぎるほど
理解していた。 それでも、エルルゥの抱えているハンデは、私のものに比べたら
桁違いに致命的だと思えた。 性格も分からない女の子に萌えることなどとても
不可能――、私の頭の中にはそういう考えしかなかった。

となると、私の敗因はひとえに『ただ認識が甘かった』という1点に尽きるのだろう。
私は、彼女を応援する人たちの、いや、私の味方も含めた『2次元世界を愛する
人たち』の想像力を、余りにも軽く見すぎていた。

「正直、あなたを応援する人たちの想像力には本当にビックリさせられた。 特に、
試合終了まぎわに見せてもらった…、その……ちょっとエッチな話とか」
――ボッ!
あ、真っ赤になった。 …まぁ、普通は誰でもそうなるよね。

「あの話を読んでたら、さすがに私も…ちょっとドキドキしちゃった。 すごいよねぇ、
SS作家さんって」
――こくん。
「ね、これからちゃんとした形で生まれる『あなた』も、やっぱり耳と尻尾が弱かったり
するのかなぁ…?」
そう言ってわざと意味ありげな笑みを浮かべながら、彼女の『弱点』を触ろうとする
かのような仕草を見せてみた。 すると彼女は、
――バッ! ぶんぶん!
目にもとまらぬ速さで両耳を手で塞ぎ首を横に振り回した。 さらに後ずさり。
両目には今にも溢れんばかりの涙がうるうるとたたえられている。
どうやらあれは、今の『自我のない』彼女にとってもかなりのトラウマだったらしい。
「ごめんごめん! ほんの冗談だったんだけどなぁ。 ホントごめんね」
泣いてる女の子を見るのは辛いので、私は思わず速攻で謝りを入れてしまった。

彼女には、、まだ生みの親から人格を与えられていない。だから彼女は自分の
言葉を持たないし、感情も赤ん坊と同程度のものしかもっていないはずだった。
でも、ひとたびSS職人からストーリーをもらい『命を与えられる』と、彼女は見違える
ほど生き生きと動き回り、観客の心を次々と虜にしていった。
特に圧巻だったのが「エルルゥの弱点」シリーズ。 耳と尻尾を優しく撫で上げられて、
甲高い嬌声をあげながらビクビクと全身を激しく痙攣させる様子は、例えようもない
くらいに刺激的で、私も、見てるだけで……身体が熱く……って、何を考えてるのよ
私はっ!!
今度は私が激しく首を振る番だった。
「――??」
うろたえる私を見て、エルルゥが首をかしげる。 私は、ひどく情けない気分になった。
それにしても。 恐るべきは職人さんたちの妄想、いや想像力。
エルルゥ側についた職人さんのSSやイラストの萌え度は、彼らが絶大な信頼と
期待を寄せている「リーフ東京開発室」のスタッフたちとも互角に渡り合えるかも
しれないと思わせるほどのものだった。 お世辞や義理などではなく、私は本気で
そう思っている。 新作「うたわれるもの」と彼女たち登場人物に、これだけ多くの
人たちが期待してくれている。 彼女は、間違いなく愛されている――。 そう思うと
対戦相手だった私まで、なんだか胸が熱くなってしまう。

私を応援してくれた人たちの想いも忘れてはいない。 私に神尾さんの想いをくれた
人、ちょっとした探検旅行を(ついでに漫才も)させてくれた人、いま思い出しても
恥ずかしいくらいエッチなことをさせてくれやがった人、そして、私にとてもすてきな
『身体を与えてくれた』絵描きさんたち。 みんなの気持ちはちゃんと受け取ったよ。
本当にありがとう。 たったあれだけしか出番がなかった私に、たくさんたくさん、
大切な想い出をくれて。 こんなに幸せなことって、ない――。

「――!?」
気が付くと、私はエルルゥを抱きしめていた。
愛しくて。彼女が、みんなが。そして私自身さえも自分で大好きになってしまって。
ちょっときつく抱きしめすぎたと感じたので、少しだけ腕の力を緩めてあげた。

「幸せだよね、しあわせなんだよね、わたしたち……」
泣きそうになるのを必死でこらえる。

私たちは『かりそめの命』。 紙の上やモニタの中、そして人々の心の中でしか
生きることのできない、人の心から生まれ育てられた、偽りの命。
でも、それでも、私たちを『つくりもの』としてでなく『ひとつの命』として扱い、愛して
くれる人がいる。 私たちの言葉から何かを感じ、そこから生まれた新たな想いを
返してくれる人がいる。 「私たちが生まれてきたことに意味はある」と、力強く叫んで
くれる人たちが、こんなにもたくさん――。

さわ…。
私はエルルゥの頭を優しくなでた。 何度も何度も。 「好きだよ」と囁くかのように。

「いい娘にしてもらえるといいね。 お父さんやお母さんに」
心からそう思う。 それがいまの私の切実な願い。
「しあわせに、なるんだよ?」

「――――」

自我がほとんどないはずの彼女が私に投げかけた微かな笑み。
私にはそれが彼女にとっての『満面の笑み』だと感じられた。 そう信じられた。
静かな、それでいてとても眩しい笑顔だった。

彼女の温もりを惜しみながら、彼女をゆっくりと抱擁から解放する。
「それじゃあ、2回戦も頑張ってね。 私、観客席から応援してるから!」

最後に、その美しい女の子に向かって元気よく手を振りながら、
私は観客席へと続く階段を目指して駆けだしていった。


この世界にいるすべてのお父さん、そしてお母さん。
これから生まれてくる『子供たち』を、どうか一生懸命愛してあげてください。
彼女たちに、この世界に生まれてきた意味を与えてやってください。
そうすれば、彼女たちがたとえこの世界でどんなに辛い目にあったとしても、
彼女たちの想いはきっと多くの人々に伝わって、人の命を正しく育む糧として
生まれ変わるはずだから。 自分たちの存在が全くの無駄ではないのなら、
彼女たちは、いや『私たち』は、心の底から幸せでいられるのだから。

どうか、この世に生まれる命が――たとえそれがかりそめの命でしかなくても――
ひとつでも多く、一人でも多くの人に、祝福されますように。


(Round38)
672 :椎名繭 :01/11/17 23:33 ID:MS/PVG4G
繭「うー、おなかいっぱいだもぅん……」
長森「わぁ、繭いっぱい食べたねぇ〜」

折原「……七瀬、残りは全部まかせた。心置きなく食ってくれ」
七瀬「うん、ななぴーがんばるっ♪ ……って食えるかぁっ!!」

七瀬「んぐっ…………」
繭「七瀬おねぇちゃんのかおがあおいもぅん」
長森「七瀬さん、大丈夫?」
折原「大丈夫だろ、七瀬だし。それより、次の試合の準備はいいのか?」
長森「でも、七瀬さん泡ふいてるもん。心配だよっ」
折原「七瀬の骨は拾うから気にするな。だよもん星の名誉のためにがんばってくれ」
長森「だよもん星人じゃないもんっ! ……じゃ、行くけど、七瀬さんお大事にね〜」

七瀬「…………」
繭「七瀬おねぇちゃんがっ! みゅーっ! みゅーっ!!」


(Round43)
238 :エコーズにて :01/11/19 23:13 ID:ewNXKiAd
「……あの子、役者には向かないわね」
 誰に言うともなく、理奈は独り言をつぶやく。
「無理してるのが見え見えなんだから……全く、返答に困るわよ」
 別れ際、やたら饒舌だった智子。
 傍目には平然としているようにも見えただろう。
 しかし、その口調はほんの少しだけうわずっていた。
 その表情は僅かにこわばっていた。
 そしてエコーズの扉を開いて去る瞬間、目尻で何かが光った。
 一般人ならともかく、テレビドラマで役者もこなす理奈にしてみれば
智子の演技を見抜くのはたやすかった。
「…………」
 勝利は必ずしも甘美ではない。芸能界の頂点に君臨し、今まで何人も
退けてきた理奈は、それを誰よりもよく知っている。
 だけど……いや、だからこそ。
 自分は強くなければならない。破れた者が、自分に破れた事を、自分と
戦えた事を誇りに思えるように。それが敗者に対する、勝者の精一杯の
礼儀だった。

 ことん
 いつの間にかマスターが現れ、新しいコーヒーを理奈の前に置いた。
 無言のまま、理奈はそれを受け取る。
 あの子は今頃、誰かの胸で泣いているのだろうか。
 理奈は自分と戦った少女に思いを馳せた。
 理由はどうあれ、私はあの子の夢を砕いた。でもあの子は、最後まで
あたしの前では涙を見せようとしなかった。
 ……むしろ泣き叫んで罵ってくれたら、こっちも気が楽なんだけど。
ああいう態度を取られると、かえって痛い。
 でもその痛さは心地よかった。

 今夜、理奈に「強くあらねばならぬ理由」がもう一つ増えた。
「保科さん……あなたも素晴らしかったわよ」
 決して届かないからこそ言える、素直な賞賛の言葉。
 それはあまりに小さくて、店内の音楽にかき消され、マスターにも
届く事はなかった。

 一つの物語が終わり、新たな物語が始まろうとしている。
 その中で理奈の目指す場所は、既に決まっていた。
 そう、更なる高みへ。

「……由綺」
 この場にいない彼女に向けて、理奈は静かに言葉を紡いだ。
 その瞳に迷いはない。
「私は、あなたの目標であり続けてみせる」


Eブロック第1試合 勝者:緒方理奈


(Round44)
757 :輝く季節だよもん ◆LTFWoEiA :01/11/21 23:26 ID:ApQC6WOB
浩平「残念でしたね、華穂さん」
繭 「うくー、ざんねんだもぅん」
華穂「そんなことないですよ。
   私に投票してくれた人が100人以上もいて嬉しかったですし」
浩平「あ、そう言えば、何気に広瀬の104票を越えてるな」
華穂「まあ、そうなんですか」
浩平「ええ。立ちグラフィックのある広瀬より得票数が多いとは、流石椎名の母親ってとこですね」
華穂「そんな……大したことありませんよ(照れ
   繭は私の分も頑張ってね。2回戦は私も応援しに行くから」
繭 「うん、がんばるもぅん」


広瀬「ムキー、なんで私よりも票が多いのよ。許せないわっ!」
七瀬「ま、まあまあ。落ち着きなさいよ真希」
広瀬「だって…(泣」


(Round50)
13 :なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/11/28 23:35 ID:tvITVU5e
「みなさん、応援ほんとうに有り難うございました」
 照明に照らされた秋子は、主婦らしく、慎ましやかなお辞儀をした。
 それから観客席を見渡し、にっこり。

「つまらないものですが、応援してくださったみなさまに、お礼としてこれを…」

 そこで言葉を止め、愛おしげに懐のものを撫でる秋子。
 金色のそれを目の当たりにした観客席がざわめきだす。
 そのうち一人が立ち上がって走り出し、二人、三人、十人、百人、いや全員、
観客は悲鳴を上げて非常口に殺到した。
 スタジアムはあっという間に無人と化した。

「……」
 ぽかーんとしていた秋子であったが、気を取り直し、後ろの居候達のほうに振り向いた。

「あぅ」「う、うぐ」
 視線を合わせてしまった子羊たちの鳴き声。

「さ、いらっしゃい」
 秋子の声は何処までも優しかった。

「あぅぅ」「うぐぅぅぅ」

「まぁ、いい子ね」
 秋子の笑顔は聖母さまのようだった。

「あぅぅぅぅ!!(涙」「うぐぅぅぅ!!(涙」

 彼らは逃げられなかった。


(Round52)
477 :偽百番勝負 ◆TcHaa552 :01/11/29 23:06 ID:v9Xo8ukm
「いっちゃったね。みさおちゃん。」
「……ああ。…くっ。」
「ちょっと折原泣いてるの?そんなんじゃみさおちゃん悲しむわよ。」
「俺はもう泣かないよ。悲しいことがあっても大丈夫。お前達がそばにいてくれるしな。」
「…浩平。」
「ほら、今日はみんなみさおの為に集まってくれたんだろ?もう少しだけあいつの話をしようぜ。」
「それもそうだね。でも、みさおちゃんって浩平と違って素直ないい子だったよね。」
「うん、折原君と違って子憎たらしいこといわないしね。」
「あれ?もしもし?俺に対する誹謗中傷をしてくれとは頼んでないぞ。」
「消えるんだったら、折原がいなくなればよかったのよ。」
「なっ、お前なぁ。」
「そうですね。みさおちゃんは浩平と違ってかわいかったから、いなくなってしまって悲しいです。」
「がはっ、茜まで…」
「本当だよ。みさおちゃんが残ってくれたら、わたし本気でかわいがるのにな。」
「うわぁぁぁん、おまえらなんか大嫌いだーーー…………」
「…あ、泣いた。」


「お兄ちゃん、ついてきちゃったの?」
「うん、悲しいことがあってね。」


485 :みさお :01/11/29 23:08 ID:VU3iJMNK
移ろい行く季節は誰にも止められない。
時間は、止まらないから。
だけど、わたしはずっとここにいた。

でも、ある日、神様が奇跡をくれた。
大好きなお兄ちゃんのもとへ。
たった、たった一日だけの奇跡。
でも、勝てば、一度でも勝てれば…。

「…でも、負けちゃったね」
みさおは、俺には顔を見せないように後ろから抱きついた。
「みさおは頑張った…頑張ったから…」
出来るだけ顔を見ないように、振り向いてみさおを抱きしめた。
「一回でも勝ってたらもう少し一緒にいられたのにね」
「もう、ここにはいられないのか…?」
「うん、約束だから」
腕越しに伝わる温もりが、だんだん消えていくのが分かった。
「でもね、本当はね…もっと、もっとお兄ちゃんと一緒にいたい…いたいよ」
「ああ、俺もだ」
「でも、お別れ。わたしはここにいちゃいけない人間だから…」

「最後にいいかな…お兄ちゃん」
「ん、なんだ、何でも言ってみろ」
「ぎゅっ、てして…」
「ああ、みさおが潰れるくらいしてやる」
「それは…いやだよ…」

みさおが透けて見えてくる。

「たった一日だけだったけど、楽しかったよ」

「…そして、ありがとう、お兄ちゃん…」

ふわりと消えた。
最後に顔を上げたその表情は、

笑顔だった。

「……『折原みさお』、今、えいえんに還りました……」

リングアナの静かな声だけが響き渡った。

最後まで死力を尽くして頑張った両陣営に拍手。


507 :試合の後に… :01/11/29 23:16 ID:ykXYpJDj
>485 >487に、捧ぐ。

初音と耕一。消えていくみさおを、為すすべもなく見つめている。
初音「お兄ちゃん、みさおちゃんが、みさおちゃんが……」
耕一「ああ……彼女は……もう、ここにはいられないから…」
初音「……私の、せい?」
ぽんぽん
初音の頭を、撫でる。
耕一「彼女は…帰るべきところに帰っただけさ」
初音「でも……」
耕一「ダメだって、そんな顔しちゃ。笑って送って。彼女が心配しないように。そして…次も頑張って戦って!」
初音「……うん」
後に残ったのは、ただ、二人。


(Round55)
228 :七誌参堕世悶 :01/12/01 23:35 ID:djvXrlQ1
美汐「お疲れ様でした、すばるさん」
すばる「はい☆ 美汐さんもおつかれさまです〜☆」
美汐「皆さんすみません……残念ながら、負けてしまいました」
すばる「でも、どっちが勝ってもおかしくない、良い勝負だったですの〜」
美汐「そうですね…すばるさん、次の試合も頑張ってくださいね」
すばる「はい☆ 美汐さんの分までがんばりますの!!」


美&す『それでは、最後に…私達の投票・応援をしてくださった皆様に感謝を…』


美汐「ありがとうございました(ぺこり)」
すばる「ありがとうございますですの〜☆」


(Round56)
921 :◆0AnYUZHA :01/12/03 23:07 ID:kiVVQykh
ハクオロ「終わったようだな」
ユズハ「そうですね」
ハクオロ「どうして撃たなかった? この日のために集めてきた画像も、
     頑張って書き上げたSSも。対戦相手に失礼ではないのか?」
ユズハ「……荒れた舞台で戦いたくはないですから」
ハクオロ「……」
ユズハ「128人もいるんですから、一人くらい一太刀も振るわずに
    去っていくものがいてもいいと思いませんか……?」
ハクオロ「この場をなだめるためだけに勝負を捨てたというのか」
ユズハ「勝負だなんて……
    わたしはもとから、お祭を眺めているのが好きなだけでしたから。
    ……さあハクオロさん、戻りましょう」
ハクオロ「……∠´×`)ユズハニャーンか」
ユズハ「……そうです。∠´×`)ユズハニャーンです……」


∠´×`)ユズハニャーン……ミンナアリガトウ


934 :偽晴子 ◆pharuko2 :01/12/03 23:14 ID:brHSriBU
敬介「お疲れさん」
晴子「よっ、負け犬。そろそろ来るやないかとな」
敬介「はは、その言い方はないだろうに」
晴子「…お疲れさんや、大会では伏兵につまづいたんか」
国崎「何者なんだこのおっさんは…誰かの情夫か」
晴子「あほっ。誰がこんなんと」
敬介「はは、きつい言い方だな」
晴子「世の中にはなあ、知らん方がええっちゅう事もあるんや。居候…」
国崎「…急用を思い出した。今晩は帰らない」
観鈴「えー、どうしたの往人さん、これからお祝いのね…」
国崎「明日には必ず帰るさ」
観鈴「…約束だよ、往人さん」
国崎「ああ」
晴子「ところで、帰る前に、この最高軍団なんとかしいや…」

「最高ーーー」
「もーーっっ最高っーーー!!!」

国崎「しらん。少し急ぐんでな…じゃあな」
晴子「さて、今日は飲もうか、敬介」
     (居候…おおきに)



集計人さん、お疲れ様っす。


(Round58)
603 :「死闘の後に」 :01/12/04 23:36 ID:GAx34u1+
 戦い終わって……

「おつかれ、マルチ」
 浩之は、マルチの頭に手を伸ばし、いつものように撫で回す。
「あ…ひろゆき…さん……私なんかのために、うれしいです…」
「頑張ったコにはごほうびあげなきゃね」

 なでなで
 なでなで

 そこにやってくる葵。
「よ、葵ちゃん、お疲れ。よく頑張ったな。頑張った葵ちゃんにも、ごほうび」
 浩之はマルチを撫でる手を休めることなく、葵の頭に手を伸ばす。
「え…でも私は別に……」
「葵ちゃんはよく頑張ったよ。だから、ごほうび」

 なでなで
 なでなで

「二人とも、今日はお疲れさん」

 こうして、試合の夜はふけていく……
 次の試合まで、戦士たちにしばしの休みを。



(Round68)
751 :上達屋 ◆JAL.PT.. : 01/12/15 23:34 ID:GVe0FNX1
速報を見上げる少女二人。
そのうち、我に返った一方が手を差し出し、もう一方がそれに応える。
両手でしっかりと握手し合う二人。

インスタントビジョンの織り上げた桜吹雪が、二人の周囲で、静かに舞い始める。

感傷に涙ぐむ少女の肩を、励ますようにぽんぽん叩くもう一人。
慰め役の彼女は、眼鏡をきらめかせ、相手の頭をぐいぐいと乱暴になで続けた。
ひとときじゃれ合ったあと、二人は手を取り合い、寄り添った。
ぼんやりと浮かび上がった丘の坂道と、そのいただきにある学校を見上げる。

それは未来に通ずる道だった。
可能性に満ちた世界への架け橋だった。

眼鏡の少女の表情がほんの少し曇った。
しかしそれはほんの一瞬のことで、眼鏡の少女は、先ほど見せた羨望を微塵も
匂わせず、朗らかな調子で、さぁ、と少女の背を押した。
触角のような髪を揺らし、坂道を上っていく少女の後ろ姿を見送る。

いつまでも。いつまでも。

最萌トーナメント
そこは過去と未来の出逢う場所
夢が競演するところ

思い出を照らす つかの間のスポットライト…

ジェットストリーム…。


(Round71)
326 :風見鈴香SS・笑顔が見たくて――Vol.7 美坂香里(Kanon) : 01/12/17 23:09 ID:5C1Um8c0
『285−64で、美坂選手の勝利です!』

「お姉ちゃん! やったねっ! お姉ちゃあぁんっ!」
「わっ……、し、栞っ! ……まったく、いつまでたっても子供なんだから」
「美坂」
「北川君」
「緒戦突破、そして初の姉妹勝ち上がり。おめでとうな」
「……うん。とりあえずありがとうと言っておくわ」
「ちえっ」
美坂香里の勝利が決まったと同時に、感極まって飛びつく妹の栞。
そんな栞を香里は、困った顔をしながらも優しくその髪を撫でてやる。
祐一や名雪、北川なども壇上にあがり、香里の勝利を祝福している。

しかしこれは勝負。勝者がいるということは、敗者も確実に存在する。


「……鈴香さん」
セコンドに控えていた牧村南と立川郁美が、残念そうな表情で選手を見つめる。

「ふぅ。負けちゃったか」
スコアボードをしっかり見つめ、袖で一度だけ目元を擦る。
「……うんっ!」
自らに気合を入れる鈴香。そのあと。
「鈴香さん?」
少し戸惑う南。
鈴香は対戦相手の、美坂香里のところへ向かっていた。

喜び湧く香里陣営に、僅かな緊張が走る。
対戦相手・風見鈴香が一歩一歩、香里に向かって歩いてくる。
頷き合う祐一と北川。万が一のため、遠巻きに香里をガードする。
しかしそんな緊張をよそに、鈴香が香里の目の前にまできた。
「美坂さん」
そういって香里に笑いかけると、一着のストールを手持ち袋から取り出した。
「あ……」
「栞?」
「あははっ。栞さんは、私のことわからなかったみたいですからね」
「ごめんなさい……」
「いえいえ。それよりも」
そして鈴香は、手に持っていたストールを、何故か栞に手渡したのだ。
「こういうのは自分の手で渡すのが、一番真心が伝わりやすいんですよね」
悪戯っぽく笑う鈴香に、栞は顔を赤くする。
そして。
照れくさがりながらも栞は、香里の元まで歩いてゆく。
そして香里に、手織りの――まだ雑な部分はあるが――ストールを手渡した。
フワリとした質感のストールを、嬉しそうに香里は羽織る。
そんな香里を栞は、涙を潤ませながら見つめていた。

(これで私の仕事も終わりました、っと)

音もなく立ち去ろうとする鈴香を、香里が呼び止める。
「まだサインしてませんよね。……これでよかったら」
そう言って右手を差し出す香里。
「――ありがとうございます。今度ともペンギン便を御贔屓に!」

最後まで調子は変わらぬまま。
香里の差し出した掌を、鈴香は固く、暖かく握り締めた。


(Round74)
795 :名無しさんだよもん : 01/12/20 23:50 ID:cvHFaNzp
賞賛、罵倒、喝采、嘲笑、ネタ、泣き、感動

  そして・・・ 「萌え」

全ての思いを飲み込んで一回戦64試合は終わった。
晴れの日ばかりでもないのと同じく雨の日ばかりでもなかった。
あるものは喜び、あるものは泣き、
あるものは笑い、あるものは怒った。
新たに参加するもの、去り行くもの、そして再び戻ってくるもの
それぞれの人の心は移り変わっても、
萌えを追求する心の連鎖はけして熄むことはない・・・。

さあ、時は来た!葉鍵板最萌トーナメント二回戦!
集え、11時までのシンデレラたちよ!

   そして数多の名無したちよ!
    支援画像の準備はいいか?
    SSの構想はOKか?
    集計ツールは用意したか?
    時間あわせは完璧か?

   「己の萌えを確かめたか?」

心臓の弱いやつは吊りの縄を多めに用意しておけ!

敗れ去ったものたちへの思いを胸に秘め、
65人(含人外)の女神たちは再び戦いの舞台に立つ!