■トップに戻る■ 1回戦 2回戦 ブロック準決勝 ブロック決勝 準決勝

最萌トーナメント 幕間SS集(準々決勝)

579 :自陣にて… :02/02/25 23:02 ID:SxBIgf7g
終った……。
自分の魅力を発揮し尽くしたあかりは23:01のゴングを聞き、静かに思った。

判定の間、自陣にいるあかりは、この日の丸一日にも及ぶ戦いを振り返る。
たくさんの支援者、投票者、この舞台を共に作り上げた対戦相手、
今日の一部始終を見届けてくれたリングセコンド、何より、自分自身。
(悔いのない戦いが、できた……よね?)
それは誰に問いかけるでもない自身の中での確認。

「いい戦いができたじゃねーか」

と、そのとき今日一日、セコンドとしてサポートし続けてくれた彼女の幼馴染が言葉を発した。
彼は今もあかりのために、普段は絶対しないであろう肩もみをしている。

思わぬ返答に目を丸くしてあかりは振り返る。
「浩之ちゃん!今の聞いてたの?」
「ん?あー、なんだ、その。お前が今日のことを考えてるみたいだったからな。そのくらいは俺にでもわかる」
浩之は肩もみを続けながらも多少照れくさい言葉だったのか、あらぬ方向を向きながらあかりの質問に答えた。

この大会の第一試合、二回戦もトップバッター、ブロック準決勝、決勝も、全て最初の試合を経験してきたあかりは
この決勝トーナメントも第一試合だった。
あかりは無神経でもなければ気が強いわけでもない、どこにでもいる一人の少女だ。
そんなあかりにかかるプレッシャーはいかほどのものだったのか。
それでも自分を支援してくれる人たちのため、彼女はリングに立ちつづけた。

浩之はそんなあかりの心情を察していたのか、言葉を続ける。
「あかり。お前、今回試合前にすごく落ち込んでたよな?正直、俺だってここに連れて来ていいものかどうか迷った。
でもな、今のお前を見てると連れてきてよかったって思ってるぞ。お前のいいところ、いっぱい見れたからな」
肩もみをするのも恥かしくなったのか、浩之は完全にそっぽを向いて鼻の頭をかいた。


あかりはふいに涙がこぼれそうになった。
もちろん自分だって納得のいくところまで戦った。
精一杯の萌えを発揮できたと思う。
だが、やはり一番見ていて欲しい人から一番聞きたい言葉が聴けたことは何よりあかりを感極まらせた。

あかりはいまだそっぽを向いたままの浩之のうしろから手を回し、その広い背中に顔をうずめた。

「お、おいっ!あかり!」
動揺する浩之、しかし、あかりはその手を解こうとはしなかった。
それどころか更に回した手に力を入れる。

「……ありがと。浩之ちゃん。やっぱり優しいね」

あかりの体の柔らかさに動揺していた浩之だったが、あかりのともすれば泣きそうな声に落ち着きを取り戻す。
浩之はふと気づくとレフェリーがリングの中央からあかりを呼んでいるのが見えた。
そして、あかりのほうに向き直り優しく言葉を返す。

「バーカ。いまさらなんだよ。ほら、レフェリーが呼んでるぜ。今日最後のお勤めだ。いってこい!」

「……うん、いってくるね。浩之ちゃん。」
浩之の体に回した手を解いてやわらかく微笑むと、あかりはリングの中央へ歩き出した。


628 :あかり退場SS :02/02/25 23:07 ID:/pGz/dh/
「勝者、倉田佐祐理!」
ドサッ
試合結果のアナウンスとともに、あかりはその場に崩れ落ちた。
「あかりっっ!」
それを見て、浩之はあかりのそばに駆け寄った。
「あかり!大丈夫か?」
「…浩之ちゃん。うん、大丈夫。少し疲れただけだから」
浩之が声をかけると、あかりは目を覚まし浩之に笑いかけた。
「ごめんね。せっかく応援してくれたのに…」
「ば〜か、何言ってんだよ。お前にしては十分すぎるくらいよくやったって。
ところで自分で立てそうか?」
「お前にしてはって…浩之ちゃんひど〜い!うん、だいじょう…きゃっ!」
笑いながら立ち上がろうとするが、よっぽど疲労が大きいのか、足元が
ふらついてまた倒れそうになる。浩之はあかりを支え、
「おいおい、ぜんぜん大丈夫じゃねえみたいだな。ったくしょうがねえなあ〜
ほれっ」
と言うと、しゃがんで背中をあかりの方に向けた。
「えっ、浩之ちゃん…」
「早くしろって!俺だって恥ずかしいんだから…」
「でも… うん、わかったよ」
戸惑ったあかりだったが、恥ずかしそうな浩之を見て、背中に負ぶさる。
「ありがとう、浩之ちゃん」
「別にいいって。これはがんばったお前に対する俺のごほうびだ。とりあえず
今日はゆっくり休め」
「うんっ!」
二人は歓声に包まれた競技場を静かに去っていった。

神岸あかり、退場―


632 :マル=アデッタあかりん :02/02/25 23:08 ID:togmZp2O
−−元ネタが銀英伝です。わからない人スマソ(^^;;;−−
「佐祐里さんとあなたを支えてくれている人たち、私はあなたの才能と器量を
高く評価しているつもりです。サブキャラを頼むなら、あなたのような人物
に頼みたいものです。ですが、私自身がサブキャラにはなれません。」
 あかりは視線を横に動かした。あかりと共に投票を呼びかけ必死に投票者の
萌に訴えかけ、共に不眠不休の彼女のパートナー藤田浩之が1本の水筒と
2個の紙コップを掲げて見せた。トーナメント最後のメインヒロイン生き残り
は微笑してスクリーンに視線を戻した。
「水瀬名雪もあなたの友人にはなれるがやはりサブキャラにはなれない。
他人事ですが保証してもいいくらいです。」
 あかりの伸ばした手に紙コップが握られるのを佐祐里は一言も発せずに見守っ
ている。
「なぜなら、えらそうに言わせてもらえば、メインヒロインとはゲームの顔を
作るという使命があるのであって、サブキャラになるにはあまりにも個性とキャ
ラクターのインパクトが強い、強くなければならない存在だからです。」
 乾杯の動作を葉っぱ陣営を代表する名メインヒロインはしてみせた。
「私はよいサブキャラに囲まれたいし、他の人を狙っている時にはよい引き
立て役でありたい。でも、私は私自身がサブキャラになることもできないし
なろうとも思いません。だからこそ、あなたと私は同じ旗を仰ぐことができ
なかった・・・・ご好意には感謝しますが、いまさらあなたに私のような存
在は必要ないでしょう。
 紙コップがあかりの口の位置で傾いた
「・・・・・・・メインヒロインに乾杯!」

・・・最萌トーナメント最後のメインヒロイン、神岸あかり準々決勝で散る


642 :頭文字J :02/02/25 23:09 ID:vrZSwoMM
 佐祐理と握手を終えたあかりは、探すわけでもなく浩之を見つけ、
「ごめんね、負けちゃった」
 と、小さく舌を出して、自分の頭を二度、軽くこづきながら近づいてきた。
 いたずらが見つかったときの、少年のようなその仕草に、浩之は覚えがあった。

 小さいころ。といっても、まだ十年も前の話ではない。
 浩之とあかり、もうひとりを加えた三人組は、ご近所さんの悩みの種でもあった。
 白猫を墨で黒猫にしてしまう。
 さらに墨で染めた猫に灰をかぶせて「けっこう毛だらけ猫灰だらけ」などという。
 さらにさらに、その猫のひげを切りそろえてしまう。
 猫の飼い主こそよい迷惑であるが、もっとも、その子猫らの引き取り手を捜すのも、浩
之たち、三人組であったから、まあ、じゃれている程度と考えていたようだった。

 だが、他人の垣根をスコップで切り崩して「秘密の通路」をつくったり、公道に大穴を
開け「塹壕ごっこ」などは、さすがに親たちも放置するわけにはいかず、三人を並び立た
せて、近所に聞かせるように、つまりはそれが目的であったが、大声で叱りつけた。
 そのとき、あかりは、
「ごめんなさい。わたしがいいだしたの」
 と、濡れ衣を自らかぶる。そのようなイタズラをするのは、当然浩之が言い出したのだ
が。
 そのときの、浩之をかばうときの仕草が、それであった。


 もしかしたら。
 と、浩之は思った。
 いつも、俺はあかりをかばっていたつもりだったが、その逆なのではなかったかと。
 寒い夜。さらに寒い中を重い食材を持ち込んで、料理を作ってくれたあかり。
 暑い昼。さらに暑い中を重い氷を持ち込んで、器用にカキ氷を作ってくれたあかり。
 寂しいとき、いつもそばに寄り添ってくれたあかり。
 イラついているとき、そっと遠くから心配げに見ているだけでいてくれたあかり。

「浩之ちゃん?」
 意識を現在に戻すと、すぐ眼の前に、あかりの顔があった。
 いや。と、浩之はごまかして、顔の下半分を手で覆った。
 それで、表情を隠したつもりであったが。
「なにか、照れること考えていたでしょ」
 あかりは、指先で、浩之のわき腹をくすぐってきた。
 それに対し浩之は、愛する人の頭を抱え込んで、空いたほうの手でこぶしを作り、軽く
なすりつける。
「ぐりぐり痛いよう」
 困っているのだか、嬉しがっているのだか、小さな甘えたような声で、あかりは言う。

 二人の前に、日常が、帰ってきた。


755 :カキコしてみる :02/02/25 23:27 ID:nr4dB6b4
傍観者達


「……おねえちゃん」
 全ての顛末を見届けた栞は傍らの姉に問い掛けた。
「これは、変化なの?」
「偶像の悲劇」
 香里は言った。
「悲劇?」
「そう」
 香里は頷く。
「このトーナメントは、本来、個々人の善意に期待するシステムだった。しかし、それは一部の
ひとびとの悲しむべき行為によって、歪められた形になった」
「……」
「恐らく……ここに来るまでに、今回敗退した彼女の、偶像としての疲労は極限に
達していた。歪められた投票。歪められた善意。正しき善意が彼女を守っている筈
だったのに、歪められた善意は、彼女が休むことを許さなかった」
 香里は、悲しげに両者が去った会場を見つめる。
「やっと、彼女は許されたのよ」
「休むことを、許された……」
 香里は頷く。


「それじゃあ……」
 そこで、栞は何かに気付いたようだった。
「これまでの、戦いは」
「悲劇、だったのかもしれないわね」
「なぜ、こんなことに」
「栞」
 香里は言った。
「すべては、試行錯誤なのよ。歪められた善意。歪められた試合。休むことを許されなかった
悲劇のヒロイン。でも、最悪の事態になる前に、物語を修正することが、出来た」
「でも、それじゃあ。これまで、負けちゃったみんなが」
「栞」
 香里は栞の言葉をさえぎった。

「ただ、拍手をもってこの結果を受け入れるべきなのよ。そうでなければ、この結果すら、
悲しいものになってしまうのだから」

「おねえちゃん……」

「さぁ、拍手、しましょう? この、素晴らしき戦いと、素晴らしき結末に。戦った人々を、
冒涜することは誰にも許されないわ。素晴らしい戦い。最後は、笑顔であるべきよ?」

 香里は、優しく妹に言った。 

 それは、香里なりの、理屈では納得できないことに悩む、妹への思いやりの言葉でもあった。


809 :ああっ神奈さまっ ◆KannaC8o :02/02/25 23:39 ID:OZwbVNJx
退場SS?

佐祐理「はい舞」
舞「…?」
佐祐理「あかりさん特製ウサギさんリンゴですよ〜」
舞「…(ポッ)」
祐一「佐祐理さん、次の試合が始まりますから、そろそろ…」
佐祐理「あははーっ、いいじゃないですか お弁当食べながら次の試合を観戦しましょう」
舞「…賛成」
祐一「そうは言ってもなぁ…」
佐祐理「あかりさんと浩之さんも呼んでますから」
祐一「へ?」

浩之「ここか?宴会会場は?」
あかり「お花見みたいだね〜」

佐祐理さん、退場…せず(ぉ

あかり「わ、おいしい〜」
佐祐理「あかりさんのお弁当もおいしいですね〜」


621 :綾香試合終了SS :02/02/26 23:09 ID:ju1ELUKu
「負けちゃった、か…」
あたしはまだその現実を受け止めきれずにいた。
準々決勝敗退。それがこの大会でのあたしの結果だった。
もちろん『負けるはずはない』なんて考えはどこにもなかった。
しかしエクストリームではしばらく味わってなかったこのなんともいえない
気持ちを、あたしはもてあましていた。
控え室で一人座っていると、応援してくれたみんなが入ってきた。
「よぅ綾香、大丈夫か?」
「………」
「姉さん、浩之… 何いってんのよ!この綾香さんがこんなことで落ち込む
わけないでしょ!」
あたしが笑いながら答えると、みんなほっとした顔を浮かべた。
でも姉さん、セリオ、そして浩之はなぜか不安そうな表情を浮かべている。
「………」
「えっ、皆さんいったん外に出てくださいって? 分かったよ先輩。みんな!
そういうことだから部屋の外に出るぞ!」
そして姉さんと浩之が声をかけると、みんな怪訝そうな顔をして外に出て行く。
しかし浩之が部屋を出ようとしたとき、
「………」
「えっ、わたしも出ますから浩之さんは残っててください? でもそんな!
先輩…」
「………」
「…わかったよ」
そういうと姉さんは出て行き、部屋にはあたしと浩之の二人だけが残った。


「…綾香」
浩之に声をかけられると、わたしはびくっと体を震わせた。しゃべらなきゃ…
そう思うと私の口から言葉が溢れ出していた。
「やだ〜 浩之、なんて顔してんの。あたしは大丈夫だって言ってるでしょ!」
「綾香…」
「そうだ、せっかく試合も終わったんだし、ラーメンでも食べにいこ!この前
新しいラーメン屋さん見つけたの。そこのラーメ…」
「綾香!」
浩之の声の大きさにあたしは言葉を止めた。そして浩之が近づいてくると、あたしは
思わずうつむいてしまった。足音が止まると、あたしは頭の上に重みを感じた。
その優しい動きでそれが浩之の手だと分かった。
「笑いたくないときに無理して笑うことなんてない。悔しいときに泣く事は恥ずべき
ことじゃないと俺は思う」
いつもとは違う優しい言葉に、視界がにじんでくる。
「浩…之… あたし… ううっ…」
いったん流れ出した涙はしばらく止まらなかった。でもその涙はあたしの悔しさや
悲しさも洗い流してくれるようだった。
「綾香… あとでそのラーメン屋連れてってくれ」
浩之の言葉にあたしは泣きながらうなずいた。そして理解した。
あたしのトーナメントはもう終わったんだ…


714 :詩子さん ◆SHIIko2U :02/02/26 23:24 ID:/xAAcWmR
みさきさんと綾香ちゃんの退場二次小説、
『かたくつないだ手』 全2レスを投下します。


「今日の対戦、川名みさきの勝利です!」
 その声とともに広がっていくざわめき。
 みさきは少しだけ笑顔になって、
 ゆっくりと対戦者の来栖川さんの元へと歩いていく。
 すこし、危なげな足取り、
 それでも、来栖川さんの元までたどり着いて、
 柔らかい笑顔で右手を差し出した。
「綾香ちゃん、今日はどうもありがとう」
「こちらこそ、本当に熱い戦い、久しぶりでした」
 ふたりはしっかりと握手をして笑顔を交し合う。
 やがて、その手も離れるかと思っていた、
 けれども、ふたりの手は離れなかった。


「川名さん、失礼だとは思いますけど、
 まだ少し、この場所には慣れてれていないように見えるのですが…」
「あ、ばれちゃったかな? うん、毎日来ているわけじゃないからね」
「それなら、リングの下まで一緒に行きましょう」
「あ、いいの? うん、どうもありがとう」
 そして、来栖川さんに手を引かれて、みさきはわたしの元へと帰ってくる。
「来栖川さん、どうもありがとうございます」
 わたしはお礼を言いながら頭を下げる。
「いいえ、これからもふたりで楽しい試合を見せてください」
 来栖川さんも同じように頭を下げる。
「綾香ちゃん、またどこかで逢おうね」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
 それだけを言って、来栖川さんも自分の控室へと戻っていった。
 とてもやさしく、それでいて、さわやかな笑顔をわたしたちに残して…


812 :玉砕小ネタ人 :02/02/26 23:54 ID:oh0B7X1a
<ハナムケノハナタバ・Last1>
勝負あった。24時間を賭けた萌えトーナメントの幕が、いよいよ閉じるとき。
 20分前とは打って変わって、葉鍵板は穏やかな雰囲気に包まれている。でもその闘いのすさまじさは残ったレスが伝えてくれるだろう。少しずつ観客も消え、リング上から人影が消えていく。
 そして私は………
「わたし、勝っちゃったよ」
 ラウンドが始まる前に訪れた墓場に、初めの約束の通り来ていた。
それでもこの場所はいつもの通り静かに私を見守っている。トーナメントに敗れてきた小さなヒロイン達の―今回闘った彼女の―吐息や、笑顔や、声が伝わってきた気がして、なんだかわたしは泣きたくなる。
「また、勝ち残っちゃったみたい」
 私が苦笑すると、漣のようにそれがその場所に広がっていく。
『悪運の強い奴だ』と苦笑いを浮かべる子も、
『よかったね、おめでとう』と笑ってくれる子も、
『次はもっと厳しい闘いなんだからねっ!』と諌めてくれる子も。
 本当に私は、いい好敵手たちを持った。
「うん、ありがとう…みんな」
 小さく向こうに夕焼けの光が見える。一日の最後に、一番より強く輝く太陽の光。
 最初に備えたままの花束が、明るいオレンジの色彩に染まってゆく…のだろう、きっと。
 トーナメントにおける私の存在もきっと彼女(ヒロイン)達と同じ、幻のような一瞬の存在なのかもしれないな、なんてふと思った。それは夕焼けのように、一瞬の。そして永遠の。
『永遠は限りのあるものにしか存在しない』
 そう言っていた彼の言葉が思い出されるような気がする。


そして私の一部もまたいつか、ここに埋葬されるときが来る。
 例え勝利し最頂点に至っても、それは変わりはしない。どんな幻もいつかは風化する。
「先輩」
 墓石を見つめる私の背中に、不意に温かい浩平くんの声が届く。
「…多分、浩平君」
「ああ、多分浩平様だ。おめでとう、みさき先輩」
「ありがとう……浩平君」
 私は振り返る。聞きたいことがあったから、1つだけ。
「浩平君…夕焼け、きれい?」
ほんの少し間があってから、答えが風になびいた。

「ああ。最高に綺麗だ」

「……よかった」
 願うなら。もし私が消えても、私の中に夕焼けがいつも、彼の言葉と共に穏やかに…存在していればいいなと思った。
「帰ろう、先輩」
 出された腕に身をもたせかけて、私は大きく微笑む。
「……うん。」


729 :秋子スキー@母乳 :02/02/28 23:13 ID:7VtKkygZ
「負け…ちゃいましたね」
結果が表示されたパネルを見て、少し残念そうに秋子さんは呟いた。
「秋子さん…」
後ろから、祐一は秋子さんの顔を覗き込んだ。名雪もその隣に。あゆに真琴、水瀬家の面々も周りを囲む。
しかし、その表情には悔しそうな表情も、悲しそうな表情もなかった。
いつもの、あの片手を頬につけた表情で、のほほんとしていた。
「本当はね、私、ここまで勝ち進んでしまった事を、少し後悔してるんです」
「え…?」
「梓ちゃんに彩ちゃん、そして、あゆちゃんまでも、手にかけてしまいまいした…」
「うぐぅ…ボクは…」
「それは、秋子さんに人気のあった証拠ですよ」
「そうかも、しれません……。けど、これからの未来を託される若い子を差し置くのは、やっぱりよくないと思うんです」
「秋子さん…」
「理奈ちゃんは…あの子は、皆の期待を一身に背負っている、アイドルです。これから、もっともっと成長して、光り輝くはずです…。こんなおばさんに、かまっている時間はないのですよ…私は、あの子の後押しが出来ただけでも嬉しいのですよ」
理奈のいる方を向く。その表情は、柔らかな笑み。これこそ母親の笑み…。
そしてその反対側、秋子さんは、Fブロック出場者全員に向かって、手を広げた。
「その…皆さん、私のお家でご飯食べていただけませんでしょうか…? お詫びの意味も、込めて、ですけど」
「お、おかあさん、大丈夫なの? こんなに大勢で…」
「ご飯は、にぎやかなほうが美味しいですから」
「限度があるだろ…」
「私が、腕によりをかけて作りますよ。名雪、祐一さん、手伝ってくださいね」
一人の娘と、たくさんの居候を従え、秋子さんは退場口から静かに外へ、そして温かい家庭、水瀬家へ。

次の世代へ……最後まで、母は母であった。

――水瀬秋子 退場――


876 :オガリナ230 :02/02/28 23:33 ID:rJ297P2S
 大声援が、会場を埋め尽くす。

 23時間。

 長い、本当に長い一日を終えて、理奈はステージを降りた。
 応援してくれた人たちへ、最後まで笑顔で手を振って。
 そして。

「理奈ちゃん、本当にお疲れ様」
「理奈ちゃん、凄かった! 凄かったよ!」
 舞台脇の通路で、冬弥と由綺が出迎える。
「ありがとう……後は結果待ち……ね……」
 理奈は微笑んで……そしてその場に倒れこんだ。
「理奈ちゃん!」
 慌てて駆け寄り助け起こす。
「ん……」
 理奈は、眠っていた。
「そっか……無理もないよね」
「理奈ちゃん、本当に良く頑張ったよ。最後まで。さすが『トップアイドル』」
 冬弥と由綺の腕の中で、理奈はやっと……19歳の女の子に戻ることが出来た。
「理奈ちゃん、お疲れ様。ゆっくり休んでね」
 その時だった。会場から、今日一番の大きなどよめきが起きたのは。
「本日の結果をお知らせします。WINNER、緒方理奈……」

 緒方理奈、準決勝のステージへ。


910 :琉一 :02/02/28 23:44 ID:AxPbrtpI
『理奈・退場SS・あなたから受け継ぐもの』

 戦いが終わり……、速報が表示された。
 暫定ではあるが、『理奈677−446秋子』。揺るぎようがない数字だった。
 その結果を、理奈本人が、一番信じられないという顔で見つめる。
「理奈さん……」
「あはは……。なんだか変な気分です。正直、勝てるなんて思ってなかったから……」
「戦前はそんな噂も聞かれました……。そのせいで、私はおごっていたのかも知れません。
 全力は尽くしたつもりですが、どこかに気のゆるみがあったのでしょう。
 いえ……今日の試合、どれだけ頑張っても勝てたかどうか……」
「ほんとに……全力を尽くしました。でもそれはやっぱり、秋子さんが相手だったから……。
 秋子さんが強かったからこそ、私は、私を応援してくれる人達は、こんなにも強く、団結することができた……。
 そう思います。」
「私も、理奈さんが相手で、これ以上ないというくらい頑張れました。ありがとうございます」
 深々と頭を下げる秋子に、かえって理奈の方が慌てる。
「い、いえ! お礼を言うのはこっちのほうです!」
「理奈さんは勝ったんですから、堂々としていなければいけませんよ」
「はい…………」
 秋子は手を差し出す。理奈はその手を握り、その温かさと伝わってくる優しさに驚いた。
「とても……とても楽しかったです。秋子さんと戦えて、良かった……」
「私もですよ。これからは、私の分まで頑張ってください」
「はいっ……! 頑張ります!」
 秋子はステージを降りてゆく。目を潤ませた名雪と、消沈した祐一が待っていた。
 自分の胸に顔を埋める名雪の頭を、秋子は優しく撫でる。


「母親か……ちょっと羨ましいな」
 理奈は呟き、もう一度観客に手を振ってから、退場ゲートへと進んだ。
 その先には、みんなが待っていた。
 由綺が、冬弥が、英二が、弥生が、はるかが、マナが、美咲が。
 みんなが理奈を祝福しようと待っていた。
「おめでとう、理奈ちゃん」
 由綺が花束を手渡した。それを受け取りながら、理奈はウインクする。
「ありがとう。でもね、まだまだこれからよ」
 次の試合の対戦者、柏木千鶴とHMX−13セリオの二人が、舞台袖に立っていた。
 言葉は交わさないが、その迸る闘気は互いの相手に、そして理奈に向けられている。
「さぁ……私の次の相手は、どちらかしら」

おまけ
「理奈ちゃん、秋子さんからお祝いが届いたよ」
「……まさかとは思うけど、一応聞くわ。なに?」
「うん……えっと、パンに塗って食べてくださいだって。あ、綺麗なオレンジ色のじゃむ」
 由綺が一匙ジャムを舐める。
「わ、このマーマレイドおいしい。理奈ちゃんも……あれ?」
 いつの間にか理奈は、光速を超える速度で、その部屋から離脱していた。


925 :聞いてオガタリーナ 勝手に退場SS :02/02/28 23:46 ID:kD11/aok

様々な装いを見せたこのステージ。
そのひとつの結果がスクリーンに映し出される。

個人個人の「想い」に優劣などはありはしない。
誰もがそれを承知している。
しかしそれでも、次のステージへのチケットは一人分しか用意されていなかった。
そう。 たったひとりの勝者にしか。

「・・・また、負けられなくなっちゃった。」

もう、何度口にしてきただろう。
理奈は、再びその言葉をつぶやく。
ふとステージの反対側に目をやると、たおやかに微笑む女性の姿が視界に入った。
言うまでもない。秋子さんだ。
彼女は、理奈のこれから、次代を引いてゆくすべてのヒロインたちのこれからを想っていた。

まだまだ私は、あの人には、かなわないわ・・・。

ちょっと肩をすくめて、理奈は心からそう思う。
だけど、弱音なんて吐いていられない。
まだ、立ち止まるわけにはいかない。


今まで、全力でせめぎ合ってくれた素晴らしいライバル達のために。
自分を支えてくれる沢山のファンのために。
飄々としつつ、ちゃんとサポートしてくれる兄さんのために。
最高の友人、そして最強のライバルである由岐との約束のために。

そして・・・。

今では常に横にいて、いつでも支えてくれる、冬弥くんのために。

「・・・・・・だから私は、まだ走り続けるの。
     これだけの”想い”を、決して無駄にはしないために。」

気がつくと、秋子さんは既に会場を後にしていた。
彼女を慕う仲間達との、素晴らしい日常の生活の中へ。

「--------------見ていてください。精一杯、輝いて見せますから。」

理奈は、心の中でそっと秋子さんへの誓いを立てると、
颯爽と歩きだした。その先には、仲間達の溢れんばかりの笑顔。
そう。 まだ、終わらない。
立ち止まるのは、すべてが終わったその時で十分だ。


もっとも「普通の女の子」に近い、史上最強のアイドル 緒方理奈。
戦いの舞台は、準決勝のステージに続く・・・。


936 :剣にたおれ・・・・(セリオ退場SS) :02/03/01 23:16 ID:XYN1tF6m

 綾香は片手にセリオの充電キットを持ったまま、セリオの肩を持って
控室のイスに座らせ、充電キットのコードを差し込んだ。
今まで見たこともない彼女のあまりの消耗ぶりに綾香の肺と心臓が
胸郭のなかで飛び跳ねていたが、どうにか最低限のことはやって、
呆然と横のイスに座った。
 セリオはイスに座って、、一見普通に見えるが、、もはやオーバー
ヒートとバッテリーの限界で警報が鳴り響くなか、声を立てずに今日
図らずも対戦しなければならなかった同陣営の彼女に話しかけていた。
「千鶴さん、もうくるはずですが・・・・」
 もはや、口を動かすことすらままならない、人間で言えば混濁する
意識の中、ついに、システムが保護モードに入ろうと彼女の思考シス
テムを一時凍結し始めている。
「千鶴さんが来るまでは起きているつもりでしたが、どうやら間に
合わなさそうです。申し訳ありません・・・千鶴さん」
 Hブロックの代表としてクールでホットな戦いをする彼女の、ピッと
伸びた背が前方に傾くのを見て、隣にいた綾香は、声と息をのんで立ち
上がった。
「セリオ、、、、、セリオ・・・・・・・」

2002年3月1日午後11時、最萌トーナメント準々決勝最後の戦い
そして、葉陣営同志が激突するという壮絶な戦いはこうして幕を閉じた。


74 :千鶴退場SS :02/03/01 23:37 ID:R88w4ko4 トーナメントの結果よりも、しでかしたことの方が、耕一は心配だった。
一面…死屍累々である。

耕一「うはぁ……すんごい有様だなこりゃ」
千鶴「はぁ……でも」
耕一「これは……いわゆるあれか、獅子欺かざるの力?」
さすがの鬼もたじろぐ踊りっぷりだった模様。
千鶴「でもでもっ!」
耕一「ほら、セリオさんもお片づけしてるよ。手伝わなくちゃ」
千鶴「でもーーーーーーー!! みんな峰打ちなんですよっ!!」
耕一「へっ?」
千鶴「ほらほらぁ、みんな、起きてくださーい」

千鶴は延ばした爪をタクトのように動かす…

(;´Д`)「あっ、ほんと」ムクリx171

千鶴「ねっ!?」
耕一「……いや、峰打ちって…超高速で物がぶつかれば…いや、それより何より血ぃでてたじゃん」
千鶴「ねっ!?」
耕一「飛んでたじゃないっ、首がっ、あれはどーなってるのよ?」
千鶴「ねっ!?」
耕一「……もっ、そんな眼でみないでよ…まあいいか……ほらほら、セリオさんとこに挨拶と後かたづけの手伝いにゆくよ」
千鶴「はーいっ」

なんだか、若返ってるような気がしないではない千鶴の手を引く。なるたけ怖い考えにならないよう努めつつ、
トーナメント会場の大清掃にむかう耕一であった。


109 :名無し坊 ◆AGQvvD6Q :02/03/01 23:47 ID:yvsjsZiK
「お疲れさま、セリオ」
 リングの上で、じっと電光掲示板を見上げていたセリオは、綾香の声に振り向いた。
「終わって、しまいました」
 いつもの通り、淡々と述べるセリオに、綾香はうんうんと頷いた。
「良く、頑張ったわよね。そして、いい試合が出来た」
「はい。これもすべて、私たちを支えてくださった、皆さんのおかげです。私には、それに応えられるような、
感謝の言葉が見つけられません」
「いいんだぜ、セリオ」
 真近で聞こえた浩之の声に、セリオと綾香が振り向いた。
「いま、セリオが思っている通りにすればいい」
 その言葉に少し戸惑うセリオ。綾香も、浩之も、そんなセリオに優しく微笑んで頷いた。
「皆さん、本当に、どうもありがとうございました」
 深々と頭を下げるセリオ。会場は万雷の拍手で満たされた。
 顔を上げたセリオの目が潤んでいる。浩之は、いつもの通り、頭を軽く、ぽんぽんと二度叩いて、セリオを促した。
 一歩一歩、リングの階段を降りていく。
 その先には、あかり、マルチ、葵、好恵……先にこのリングを去ることとなった仲間たちが待っていた。
 セリオたち三人の影が、その輪に溶け込んでいく。
 こうして、一つの作品という世界の中で、ともに生きる少女たちの戦いが、ここに幕を降ろした。
 彼女たちは日常に戻り、その中で、笑い、泣き、怒り、そしてまた、我々を萌えさせてくれることだろう。

 今はただ、少女たちに、安らかな休息のあらんことを………。

                  ……………HMX−13セリオ、そして、To Heart全キャラ、退場。


133 :セリオ退場SS :02/03/01 23:55 ID:XFsxoI4R
綾香 「お疲れ様」
 試合場の下。綾香は、セリオを迎える。
 疲労で、足取りは確かではなく。
 倒れこむように、綾香のもとに。
セリオ「−−綾香様…負けて…しまいました」
綾香 「いいのよ……あなたは頑張ったわ」
セリオ「−−力が足りませんでした……」
綾香 「そうね、千鶴さんは強かったわ……でも、あなたは凄くいい勝負をした。ステージの上のあなたは、輝いてたわ」
セリオ「−−ありがとう…ございます…」
 綾香の膝の上に頭を乗せ、横たわるセリオ。
 電力を使い尽くしたのか、スリープが近い。
綾香 「お疲れ、セリオ。もう休んでもいいのよ……」
セリオ「−−ありがとうございます…みなさま………」
 目を、閉じる。
 スリープモードに入る直前、ふと、セリオが漏らす。
セリオ「−−……残念、です……」

 お疲れ、セリオ。
 ここまでのあなたの善戦に、乾杯。